『ご奉仕喫茶〜天使達におまかせ〜 かおり編』あらすじ
そこは、思い出の場所だった。
赤くて、黄色くて、虫食いの緑色。
色々な姿を見せてくれる幻想的な場所だった。
姉:「綺麗な色ね────」
姉の言葉はここにある色よりも綺麗な色だと思った。
透き通り、響き、包むように優しいアルトの声。
本当に、忘れられない声だった。
和也:「うん」
姉:「ふふ」
それを──『音』と表すより、『色』だと思ったのはなぜだったか。
幼かったからか。
それとも、本当に綺麗な色をしていたのか。
いや、そのどちらもだったのだろう。
姉:「和也」
和也:「なに?姉さん」
姉:「また、一緒に来ようね」
なぜならば、木漏れ日に映える彼女の姿────
それが、あの時、幼かった草壁和也という少年の、全てだったのだから。
返せない言葉。
果たせない約束。
交わした陽射しの後ろには、今もあの紅葉が揺らめいている。
嘘でもいい。
答えてあげればよかったのに。
彼女の言葉が残り僅かな鼓動だと知っていたから。
俺は、その『音色』に心奪われたまま、口を引き結んでいたのだろう。
そう────
それは、穏やかで微かな笑み。
残された約束の奏でる、たった一人の葬送曲。
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